ぼくのシンバル編

どうも。ドラマーの大井一彌です。

 

太鼓や金物を数点組み合わせて、一人でそれらを演奏し易いように配置した打楽器群の様式のことを、ドラムセットと言うんですが、

 

元を正せばそれは、個々に独立したひとつひとつの立派な楽器であります。

 

ただ、僕が主戦場としている戦後のポピュラー音楽シーンにおいては、その組み合わせ方にはある程度のお決まりがありまして、

 

バスドラムという大太鼓を足に据えたペダルで叩く。スネアドラムがある。シンバルを2枚組み合わせたハイハットという装置がある。等、当たり前になり過ぎていて疑問を持つこともしないその組み合わせは、1900年代からの約100年をかけて様式化されていったようです。

 

ドンだのジャンだの言う楽器の組み合わせを飽きもせず研究するのはさぞ面白い事だったろうなと思います。厳密に正しい音階で並ぶ必要があるメロディ楽器とはわけが違う自由度ですから、なんか思いついたもん勝ちみたいな楽しさがあったことでしょう。

 

そんな自由な1900年代初期のTrap setと呼ばれるようなモノから現代のドラムセットに至るまで、どのようなアップデートがあったかを僕なりに考察すると、

 

それはバランスの進化だと思っています。

 

太鼓と金物は、それぞれぜんぜん違う音がします。けども、それらが一体になって合奏されるとき、どれかが飛び抜けて音がでかかったり、ちいさかったり、耐久性にばらつきがあったりしないように、長い年月をかけて楽器に使う素材を変えたり大きさを変えたりして、太鼓に合う金物、金物に合う太鼓、歌やほかの楽器に合うドラムセットを目指しているわけです。

 

たとえば僕が現在使っているドラムセットはTAMA製のStar walnutで、シンバルは、ドラムや他楽器や歌とのマッチングを僕なりに研究して選んだ複数のブランドのものが置いてあります。

 

そして、

いつも僕のシンバルに関しては、その選定を相談する際の信頼できる数少ない相方がおりまして。そのひとりである渡辺さんという男が20201月のNAMM Showでゲットして来てくれたTurkish Cymbalsの、Cappadociaというシリーズがやばいのでちょっと紹介します。

 

 

圧倒的にバランスが取れている というのが一番の感想でした。

 

僕は仕事で色んなジャンルの音楽アーティストのドラムを叩くのですが、どんなシーンにもマッチします。

 

特徴的な音色でありながら、

音量、高音、低音、サスティーン、打感、見た目

において、どれも完璧に欲しいところを満たしてくれています。

 

これがなかなか難しいことでして、

音量が十分あるシンバルは、高音がうるさくて打感が硬かったり、

逆に、打感と高音の具合がちょうど良いシンバルは、音量が小さかったり低音がダブついたりと、一長一短な場合が結構多いのです。

 

さらに、ハイハットとライドに関しては、曲中で最も叩く回数が多い、パルスを刻むための楽器であり、

浮き出すぎても邪魔だし、聴こえなくても駄目なので、シンバル群の中でもそのバランスが特にシビアなパーツなのです。

 

僕も色んな楽器を触ってきましたが、ハイハットとライドのペアがキマッたなと感じたのは初めてです。

 

ちょうどいい打感で、高音のイタい周波数帯域には丸みがあって、低音はしっかり出つつも広がりすぎず、かつ十分な音量感がある。

久しぶりにすげえシンバルに出会いました。

 

また個人的に感動したのが、

僕がCappadociaシリーズのシンバルを使うずっと前から気に入って使っているBosphorus CymbalsTrash CrashChina、その他のトラッシュシンバルとの相性をさらに良くしてくれるようにして僕のドラムセットに軸を通してくれたことです。これはまじで嬉しかったです

 

前述でもバランスが大事だと言ったように、

結局そのパーツが良いだけでは成り立たないものなので、打楽器群としての完成度がグッと上がった感じがしている現在、とても充実しております。

 

有難いことに僕はCappadocia1年ちょっと前にNAMM帰りの渡辺さんから真っ先に紹介してもらって、皆さんよりは長く実戦投入でその効果と恩恵を十分に実感しましたので、ここで自信持って紹介出来ます。

 

勝手に僕のシグネイチャーサウンドだと思っているほどの愛着があるので、良かったら試してみてね。

 

Zildjian CONSTANTINOPLEのピング感、PAiSTe Formula602のダイナミック感、MEINL EXTRA DRYのトラッシュ感、

 

愛すべき色んなシンバルをもう一度思い出すような、記憶のハブになるようなシンバルを見つけると、無性に楽器屋へ行きたくなります。

 

あー、大井一彌はこれをバランス良いと思ってるんだね〜 みたいなこと感じてご自分との差を見つけてくれるだけでもそれは楽しいことなので、

 

是非、わんさか楽器がおいてある楽器屋へ!

 

色々叩き比べて遊んでみるのがおすすめです。

 

僕のドラムセットは、先日の投稿でご紹介したように、電子楽器との親和性を高めていくための機械や装置を研究する進化の最中ですが、

こんなに様式化され切った現代の生ドラムセットの内容においてもまだ、太鼓や金物は進化し続けているんですね。

 

いつの時代だって、その時代の本気を実現してるんですから、その時代のプレイヤーやメーカーからしたら、もうこれで十分よ!って気持ちになるもんだと思うんですが、

進化は止まらないようです

 

楽器って楽しいね

 

 

2021November