三年

 

 

知らない駅を幾つも通り過ぎる度に自分の存在が少しずつ薄れていくような、、この知らない電車の知らない終着駅まで行ってしまったら自分がフッと消えてしまうような気がして、

焦りでいてもたってもいられなくなって、降りてしまった。

 

もう小一時間前から車内にはほとんど乗客が居なかったし、ここで降りたのも僕含め2、3人ほどだった。

 

「三年」

 

という駅だった。

 

 

電車が行ってしまうと、薄暗い照明に羽虫がたかっている音しか聴こえない。駅舎の梁の汚い電球が照らす弱々しい光は今にも静寂に押し潰されそうになっている。駅員はおらず、改札の賽銭箱に切符を入れて勝手に出ていくだけだ。

 

 

もうここへは電車は来ない。

 

駅舎の外は真っ暗闇。

都心暮らしにチューニングされた感覚のせいで、時刻と自分の置かれた状況のズレにクラクラする。まだ22時前だというのに、、

 

 

どうにか一晩の宿を見つけないと。

急務はそれだけだ。

 

だが絶望的に人と灯りが無い。

駅舎の門前の細い道が緩やかな坂を下降しながら暗闇に消えていくのみだ。この道に分け入って街灯のない暗闇を這うように進んでも、状況が良くなるイメージが全く湧かない。

 

駅舎で朝を待つか、、

いや、それは最後の手段だ。

 

今さっき電車を降りた時に、隣の車両から数人降りていたよな、、なんとか恥を忍んで声をかけて、この辺に泊まれるところがあるか訊いてみよう。もし何も無くてもその人に泣きついてみよう。どうにかしてもらえるかもしれない。

 

そう思って辺りを見回してみたが、誰も居ないのだ。

 

駅舎は小さく、ここにしか改札は無さそうだ。自分以外にも人が降りたのは見た。だから誰ともすれ違わないのはおかしい。

 

 

 

ああ、困った。

 

 

 

 

 

21:45…

 

 

どうしよう。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

目が覚めた。

 

 

久しぶりに夢を見た。

 

 

JRみたいな電車に乗って、「三年」という知らない駅に着いて、なんの助けも得られず孤独で、それがどこか心地良いような、これまでに何かで感じたことがある気がする、透明度の高い絶望感。

 

不思議な夢でした。